キリン解剖記
キリン解剖記という本を読みました。主人公(著者)は、小さい頃からキリンが大好きで、好きが高じて東京大学でキリン博士になった郡司芽久という女性です。研究を始めてしばらく、彼女は研究テーマが決まらないままひたすらキリン解剖の腕を磨いていました。哺乳類の首の骨(頚椎)は7つです。しかしキリンは高いところの木の葉を食べ低いところの水を飲むので、出来るだけ首を動かす必要があります。そこで彼女はキリンには8つ目の頚椎があるのではないかという仮説をたて研究のテーマとしました。そして仮説を立証すべく解剖を繰り返す中で、彼女は大切な事に気づき研究者として成長していきます。たとえば、
・先入観にとらわれず目の前にある物をありのまま観察することの大切さ。
・知識は生活を豊かにし、目にとまるものに価値を与え、新たな気づきを生み、日常生活を輝かせてくれるということ。
・誰かに強いられて知識を詰め込む「勉強」と、自らの喜びとして主体的に知識を得る「学問」の違い。
・夢中になれることに出会い、時間をかけて取り組むことの素晴らしさ、などなど。
彼女の研究が進むにつれ次々に新しいことが発見され、本当にキリンは8つの頚椎があるのではないか?と本を読む私もわくわくしました。しかし私がこの本で一番感動したのは、キリンに対してです。研究の結果、キリンの頚椎はやはり7つしかないことが分かりました。その代わりキリンは胸の骨(胸椎)も動かせることがわかりました。第1胸椎が8番目の頚椎の役割を果たしていたのです。胸椎は(人間も同じですが)、あばら骨が付いているので本来は動きません。そこでキリンはあばら骨の位置を後ろにずらして第1胸椎だけは動かせるように進化していたのです。このおかげで首の可動域が50cm広がりました。キリンは目的のために手段を選ばす進化を遂げた動物だったのです。
話変わるのですが、先日、打ち合わせの席で「大切なのは手段や目標ではなく目的である」という話を聞きました。なるほど、「目的」。私達はどんな目的のために清掃をしているのでしょうか。綺麗にする事が目的?仕事が日常化し、その先にある大切な目的を忘れてはいないか。こんなことを考えていた矢先にこの本を読んだので、目的を遂げたキリンについつい感動を覚えました。キリンよ、あなたは偉かった!
みなさん、暑い日が続きますが身体をご自愛ください。