思い込みの自分がいます
みなさんこんにちは
だいぶ秋も深まってきました。先月は食欲の秋をテーマにしましたので今月は読書の秋です。今年6月号ピッカピカの「道具の扱い」で佐伯泰英さんの時代小説の一部を紹介しましたが、その後けっこう反響がありました。みなさん読んでいる方が多いようです。私も時代小説が好きで、池波正太郎さんを始めとし随分と読みました。でも今回は時代小説ではなく別の本を紹介します。
中川季枝子著「いやいやえん」です。1962年出版で私が小さい頃読んだ童話ですが、ふとしたきっかけで読み直し、子供の頃の素直な気持ちに戻りました。
物語はチューリップ保育園に通う4歳のいたずら坊主のしげる君が主人公です。かわいい夢のある不思議な出来事が載っています。この物語の中でしげる君は「人のせいにしない、遊んだあとは手を洗う、お人形を投げない、クレヨンを食べない、嘘をつかない」など先生やお母さんに叱られながら人生の基本を学んでいきます。
しげる君は小さいので、嘘をついてもまだ他愛無いです。でも私たち大人はやっかいです。姉歯事件や旭建材事件などはもとより、小さな偽りや誤魔化しでも取り返しのつかない大きなことに繋がります。信頼も失います。私は「いやいやえん」を読んで、改めて「仕事は王道を進むべし」と思いました。
もう一冊。
米マサチューセッツ工科大学教授のピーター・センゲ教授の著書「出現する未来」です。
難しいことはよく分からなかったのですが、ひとつ納得した内容がありました。
「人は自分で見ようとしているものを見ている。」という事です。どういうことなのか事例が紹介されています。「1980年代はじめ、米国の自動車メーカー幹部が生産性で米国企業を上回ったトヨタ自動車の組み立て工場を視察した時のことです。米社の幹部は視察の後「本物の工場は見せてもらえなかった」と語ったそうです。「どこにも在庫がなかった。だからこれは本物の工場ではない。我々の視察のためにつくられたものだ。」というのが理由です。この幹部は自分の持つ工場のイメージ、つまり在庫の山がない組み立て工場などないという思いで見たために、トヨタの「ジャストインタイム※在庫を作らない生産方式」の生産システムの本質を見ることができなかったのです。あらかじめ見るつもりのものを見てしまい、目の前にあった現実に気づくことができなかったのでした。
これって自分達の仕事にも当てはまります。
清掃して綺麗にしたつもりの自分。取れない汚れは目に写らない自分、綺麗にした場所しか目に入らず周囲の汚れに気づかない自分。ついつい自分の思い込みで見てしまうために気づかないことも多いと思います。みなさん、仕事が終わった後のセルフチェックを先入観なしにできるように練習してみてください。
ちなみに私は洋服屋で気に入った服を見ると、それを着ている8等身の自分をイメージしています。目の前の鏡には5等身の自分が写っているのに・・・。これは先入観ではなく現実逃避でしょうか。
まだまだ落ち葉の多い季節です。みなさん苦労されていると思いますがよろしくお願いします。